動画でわかる野球解説

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日本人の本塁打60本は無理なのか

小技が目立つプレミア12


2019 プレミア12 侍ジャパン 周東, 源田壮亮 11/11 vsオーストラリア 同点セーフティバント

 

野球の国際大会であるプレミア12が開催されている。日本は自慢の投手陣と、小技、足技によって優勝を狙える位置にいるのである。

 

確かに、スモールベースボールは日本のお家芸。得意な戦略であることはわかるが、いかんせHRが出ていない。

 

日本を代表するバッターが数多く選ばれているにもかかわらず、そのHRはわずか3本。しかもすべてを4番鈴木が打ったものだ。

 

確かに、山田選手、坂本選手といったHRを狙える選手がことごとく不調なことはわかるが、それにしても少ないものである。

プロ野球の最多HR記録はバレンティンという事実


バレンティン60号ホームラン達成(日)

 

プレミア12でのHRの少なさを記載したが、レギュラーシーズンの記録を見ても、日本人スラッガーの人材不足が起きているのではないかと思う。

 

実際に、プロ野球のシーズンHR記録を持っているのは、外国人選手のバレンティンである。その本数は60本。2013年に記録したものだ。

 

2位は55本。レジェンド王貞治を筆頭にローズ、カブレラ、バースという外国人選手が並ぶ。そう、日本人選手で55本を打った選手も王貞治だけなのだ。

 

3位以下には、野村克也、落合博満(52本)、小鶴誠(51本)と並ぶ。しかし殆どが2000年よりも前に記録されたもので、2000年に入って日本人で50本以上打ったのは、ゴジラ松井秀喜(50本)(2002年に記録)だけである。

 

その後、40本台の選手は一気に増え、48本に西武の中村選手、47本に山川選手、46本には元横浜の村田選手など、世代を代表したスラッガーが並んでいる。

50本という壁

60という数字以前に、日本人選手にとっては50本ですら大きな壁となっている。

ではなぜ、50本以上のHRがでなくなっているのか考えてみた。

検証1:ボールの変化


プロ野球 飛ぶボールの危険性 選手たちの切実な訴え

 

 

ラビットボール」という言葉でピンとくる方もいるだろう。問題になった飛びまくるボール。

 

2001年から2005年の間に用いられたボールで、特に2003年と2004年は、全体のHR数が2000本に迫るなど、投手にとっては脅威になった。

 

が、しかしである。この2年間に全体のHR数がアップしておきながら、タイトルゲッターが記録したHR数はこうなっている。

・2003年 パ:ローズ(51本)セ:ウッズ(40本)

・2004年 パ:松中、セギノール(44本)セ:ウッズ、ローズ(45本)

 

ローズが2003年に50本以上を放っているが、その他は40本台前半。ちなみに2002年にはカブレラが55本、松井が50本を打っているので、タイトルゲッターの記録としてはむしろ減っているのである。

 

したがって、ボールの変化がもたらす影響は少ないと見える。

検証2:投手の変化

ボールの変化でなければ、投手の変化なのか。確かに、近年の投手の成長は著しいと言われている。

確かに、変化球のキレがまし、急速が上がっている感はあるが、これに関しては莫大なデータが必要になるので、検証は困難だ。

検証3:クライマックス


0927 阪神 横浜DeNA 巨人 CS争いプロ野球 ハイライト 熱盛 マギー 京田 安藤 狩野 2017 1

 

HRを狙っていくには、ある程度自由にバッティングできる環境が必要だ。したがって、チームバッティングを求められる選手は、HRを狙いにくい。

また、ある程度勝負と関係ないところでHRを狙う環境が多くないと、タイトルゲッターのHR数は伸びないのである。

 

そこで考えられるのがクライマックスシリーズによる影響だ。2004年から作られたこの制度。今ではすっかりおなじみで、各リーグ3位までに入れば日本一を狙えるのである。

 

つまり、優勝が絶望的になっても、3位までに入れば次の目標が見えるので、シーズン終盤まで勝利にこだわった勝負を強いられる。

 

そのため、昔は個人の記録を重視していた終盤戦にも、チームのためのバッティングを求められるようになっているのだ。

 

これは個人の感想になるが、たしかに最近は、消化試合でHRを狙うという光景はあまり見られない。早々とシーズンからドロップアウトして、記録を目指す試合は少ないといえる。

 

さらに言えば、投手も真剣勝負をしてくる。シーズンが終わり、調整に投げるといったパターンも少ないので、厳しい攻めを最終盤まで貫くのだ。

 

以上のことから、投手の成長とクライマックスシリーズという2つの要素が、50本以上を困難にしていると筆者は考える。

30本打てれば強打者


巨人 坂本勇人➡欲張りセット(2019 1~35号ホームラン集, 2018年 1~18本 全ホームラン集)

 

タイトルのとおり、日本人選手が60本打つ姿を見てみたい。ここで一回、今年の日本人HR数ランキングを見ておこう。


ライオンズ・山川 唯一無二の破壊力…『どすこい弾』10発まとめ《THE FEATURE PLAYER》

 

坂本(巨)40本

村上(ヤ)36本

山田(ヤ)35本

岡本(巨)31本

筒香(デ)31本

 

山川(西)43本

浅村(楽)33本

中村(西)30本

松田(ソ)30本

吉田(オ)29本

 

である。こうしてみると、強打者と言われている選手でも、30本打てばかなり優秀40本を打てばスラッガーと呼ばれるということがわかる。

 

ちなみに、松井選手が50本を打った2002年でも、HRランキング2位はペタジーニの41本。つまり、50本に迫るホームランというのは、強打者が突然変異的に打ちまくらなければならないのだ。


【ゴジラ松井】松井秀喜ホームラン集1「その球も入っちゃうのかぁ・・・。」

 

やはり難しい60本


タイロン・ウッズ 35号36号 2打席連続HR 2003.09.16

 

2019年、全打席HRを狙うと宣言した西武・山川選手が序盤からHRを連発。しかし、中盤になってペースを落とすと、終盤は優勝をかけた激戦のなかでチームバッティングをするようになり、43本という結果に終わった。

 

HR60本を打つためには、投手やチーム状況といった様々な要素が組み合う必要がある。そしてそれは、必ずしもチームにとってプラスではないことも明記しておく。

 

もし、山川がチームの成績を全く意識しなくていい状況で、気楽に打席に立てたなら、もっとHRを打っていたのかもしれない。

 

こう考えていくと、50、60本というホームランが出ないのは、よくも悪くも野球界が変わり続けている証明になるのではないだろうか。

 

欲を言うなら、優勝争いをしている中での60本をぜひ拝んでみたいものである。